『ミス・ダンデライオン』
―――2010年8月、鈴谷樹里(ルビ・すずたにじゅり)は19年前へ飛ぶ。
―――19年前に病気で亡くなった、ヒー兄ちゃんを救うために。
横浜大学付属病院で働く医師・鈴谷樹里は、11歳の頃、小児性結核で入院していた。その時、同じく入院していた作家志望の青年・青木比呂志と出会い、「ヒー兄ちゃん」と呼んで慕うようになる。ヒー兄ちゃんは、幼い樹里に楽しいお話をたくさん聞かせてくれていた。しかし、ヒー兄ちゃんはチャナ症候群という難病のため、亡くなってしまう。19年後、樹里は、チャナ症候群に劇的な効果をもたらす新薬を手に入れる。ヒー兄ちゃんを救うため、樹里はクロノス・ジョウンターに乗り込み、19年前の過去へと飛ぶ。
『南十字星駅で』
―――2051年3月、野方耕市は57年前へ飛ぶ。
―――57年前に事故で亡くなった、萩塚敏也を救うために。
元エンジニア・野方耕市は、79歳。ある日、熊本の科幻博物館から、収蔵品の修理を依頼される。それは、43年前に自分が開発した、クロノス・ジョウンターだった。修理するうち、野方の脳裏に青年時代の記憶が蘇る。大学4年の夏、野方は親友を失った。名前は萩塚敏也。萩塚は屋久島で沢登りしている最中、鉄砲水に流されて亡くなったのだ。萩塚に屋久島行きを勧めたのは、野方だった……。萩塚と最後に会った日に、もう一度行こう。野方はクロノス・ジョウンターに乗り込み、57年前の過去へと飛ぶ。